老健の類型と「超強化型」の正体
介護老人保健施設(老健)を調べると「超強化型」「加算型」「その他型」という言葉が必ず出てきます。しかしこれらは厚生労働省の告示に定められた基本サービス費の区分ではありません。本ページでは、告示に実際に何が書かれているかを、原典を全文検索した結果とともに示します。
告示に定められている区分
告示に基本報酬の区分として定められているのは【基本型】【在宅強化型】【療養型】と『特別介護保健施設サービス費』であり、俗に使われる『超強化型』『加算型』『その他型』は基本報酬の区分ではない。
| サービス費の区分 | 内容(算定構造の表記) |
|---|---|
| 介護保健施設サービス費(Ⅰ) | (ⅰ)従来型個室【基本型】/(ⅱ)従来型個室【在宅強化型】/(ⅲ)多床室【基本型】/(ⅳ)多床室【在宅強化型】 |
| 介護保健施設サービス費(Ⅱ) | 療養型老健:看護職員を配置(算定構造R8.6.1 p.19 の表記) |
| 介護保健施設サービス費(Ⅲ) | 療養型老健:看護オンコール体制(同上) |
| 介護保健施設サービス費(Ⅳ) | 特別介護保健施設サービス費(同上) |
「超強化型」「加算型」は原典に1件も出てこない
『超強化型』『加算型』『在宅復帰・在宅療養支援等指標』のいずれの語も、告示第86号(983ページ全文)および算定構造R8.6.1(48ページ全文)に1件も出現しないことを機械的に確認した(出現数0)。
つまり、これらの呼び名は制度の運用のなかで使われている通称であって、基本サービス費の単位数がこの名前で分かれているわけではありません。シミュレーターで「超強化型」を選ぶ欄が無いのは、選ぶべき区分がそもそも存在しないためです。
では何が違うのか — 加算の算定可否として現れる
在宅復帰・在宅療養支援等指標による『超強化型/加算型』の差は、基本サービス費の区分ではなく『在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅰ)/(Ⅱ)』(いずれも1日につき+51単位)の算定可否として現れる。加算(Ⅰ)は【基本型】の4区分に、加算(Ⅱ)は【在宅強化型】の4区分に対応する(算定構造R8.6.1 p.19 の座標解析で確認)。
| 加算 | 単位数 | 対応する基本サービス費の区分 |
|---|---|---|
| 在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅰ) | +51単位/日 | 基本型・従来型個室 / 基本型・多床室 / 基本型・ユニット型個室 / 基本型・ユニット型個室的多床室 |
| 在宅復帰・在宅療養支援機能加算(Ⅱ) | +51単位/日 | 在宅強化型・従来型個室 / 在宅強化型・多床室 / 在宅強化型・ユニット型個室 / 在宅強化型・ユニット型個室的多床室 |
この対応表は本サイトのデータから生成しています。療養型(介護保健施設サービス費(Ⅱ)(Ⅲ))と 特別介護保健施設サービス費には、この加算の対応がありません。
在宅復帰・在宅療養支援機能加算を含む各種加算・減算は未収集のため、 本サイトの計算には含まれていません。実際の請求額は本サイトの概算を上回るのが通常です。 いわゆる「超強化型」の施設では、この加算の分だけ費用が上乗せされます。
類型ごとの基本サービス費(従来型個室・1日あたりの単位数)
参考として、告示に定められている類型ごとの単位数を示します。療養型が区分数としては最多ですが、実在する老健の多くは基本型か在宅強化型です。
| 類型 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 基本型(介護保健施設サービス費(Ⅰ)) | 717 | 763 | 828 | 883 | 932 |
| 在宅強化型(介護保健施設サービス費(Ⅰ)) | 788 | 863 | 928 | 985 | 1,040 |
| 療養型(介護保健施設サービス費(Ⅱ)) | 758 | 843 | 960 | 1,041 | 1,117 |
| 療養型(介護保健施設サービス費(Ⅲ)) | 758 | 837 | 933 | 1,013 | 1,089 |
| 介護保健施設サービス費(Ⅳ) | 703 | 748 | 812 | 865 | 913 |
単位: 単位/1日あたり。金額にするには地域区分の1単位単価(10.00〜10.90円)を掛けます。 ご自身の条件での金額は老健のシミュレーターで計算できます。
取得できていないこと
- 『別に厚生労働大臣が定める施設基準』(室料相当額控除の適用要件、および介護保健施設サービス費(Ⅰ)〜(Ⅳ)の区分要件)の具体的内容 — 告示第86号は新旧対照表形式で該当箇所が『(略)』となっており、要件本文が含まれていない。確認には施設基準告示(平成27年厚生労働省告示第96号等)の現行条文または留意事項通知の参照が必要。推測で埋めていない。
- 各種加算・減算(在宅復帰・在宅療養支援機能加算を除く) — 本タスクの収集対象外。実際の請求額はこれらの加算により基本サービス費を上回るのが通常であり、シミュレーターでは『基本サービス費のみの概算』である旨の注記が必要。一覧は算定構造R8.6.1(https://www.mhlw.go.jp/content/001675193.pdf)p.19-20 に掲載。
出典
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和6年厚生労働省告示第86号)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001227814.pdf
新旧対照表形式。改正後=左列の値を採用。別表『指定施設サービス等介護給付費単位数表』のうち、2 介護保健施設サービスは PDF p.150-154、4 介護医療院サービスは p.211-218。室料相当額控除の注は p.236(老健)/ p.237(医療院)。pdftotext では抽出不能、PyMuPDF で抽出。 - 介護報酬の算定構造のイメージ(R8.6.1)
https://www.mhlw.go.jp/content/001675193.pdf
令和8年6月1日時点。2 介護保健施設サービスは p.19、4 介護医療院サービスは p.21。居室タイプ(<従来型個室>等)と老健の類型(【基本型】【在宅強化型】【療養型】)の対応はこの資料の表記による。PyMuPDF の get_text('words') で座標を取得し、行・列の対応を機械的に検証。 - 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示(令和8年厚生労働省告示第87号)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001675895.pdf
令和8年度介護報酬改定(期中改定、令和8年6月1日施行)。別表『指定施設サービス等介護給付費単位数表』の改正内容は p.28(2 介護保健施設サービス)/ p.30-31(4 介護医療院サービス)で、いずれも『イ~マ(略)』『イ~ケ(略)』として基本サービス費部分は改正対象外であり、介護職員等処遇改善加算のみを改正している。
告示第86号(令和6年・新旧対照表の改正後列)と算定構造R8.6.1(令和8年)という2つの独立した一次情報から、それぞれ独立にPyMuPDFの座標付き抽出で表を機械的に再構成し、区分の並び順・階層ラベル・単位数を1件ずつ突合した。全件一致。